SEIKAの似顔絵作家たち

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 似顔絵の展覧会ということで、どのような作品にしていこうと考え、調べている中で、平安時代後期から鎌倉時代にかけて流行った似絵[にせえ](細い線描を重ねてモデルの特徴をリアルに表現する肖像画の一種)というものを見つけた。京都国立博物館での解説はコチラ。皆さんがよく知っている作品でいうと、京都・神護寺蔵の伝源頼朝像がある。

 そこで、現代の著名人(2009年当時)を有職故実に基づいた衣装を着せて描いたら面白いのではないか?と閃いた。これは面白そうだと思い、その方向で制作したのがこの展覧会の作品である。着物の柄や畳の縁にも、その人その人にちなんだ模様を入れてみた。それぞれの持ち物も工夫を凝らしているので、その辺りも観て頂けると楽しめると思う。

◇USJでの葛藤(似顔絵歴は長いけど)

 大学2年生の頃より、イベントなどで似顔絵をずっと描いてきた。2009年当時で既に20年のキャリアとなる。この頃はユニバーサル・スタジオ・ジャパンのパーク内でも似顔絵を描き始めており(2006年〜2014年まで)、描く枚数も格段に増えて自身の腕前にも確かな手応えを感じ始めた時期でもある。(ここまで写生をしたのは学生以来であり、自身の画力がドンドンと伸びていくのが実感出来た時期だ。)

 自分の画力の充実とは裏腹に、見事にお客がつかないのには参った。上の絵をご覧頂くとお分かりかも知れないが、顔の描写が写実的である。それに比べ、USJの他の似顔絵作家たちの絵はおしなべて可愛い絵柄なのである。下の絵は当時の机の上に置いていたサンプル似顔絵。席に着かれて、自身がモデルになって顔を描かれると、僕が目指しているリアルな中にある可愛さというモノを実感して頂けるのだが、パッと見だとリアルなだけに映るのだ。(リアルに見えても色々と省略したり強調したり、と随所に工夫は凝らしています!)

8年間の勤務の間に、記念すべき描いたお客さん0組を何度か出している…。場所とお客さんの層って大切だなと学んだ8年間だった。しかしここでの経験が、後の絵本「潜入!天才科学者の実験室」で大いに役立っている。

USJで似顔絵を描いていた頃のサンプル画。写実的なタッチなので、他の作家から浮いていたため、自分の顔をサンプルにして机に置いていた。画家とモデル、見物客と作品、全てが自分という作品だ。黄緑の服は当時の衣装。

 そんな時期にお話しを頂いたので、写実的な描写だけどこういう観せ方もあるだろうという自分なりの問題提起でもあった。何故写実的な描き方にこだわるのかは、また後日詳しく書きます。

◇こぼれ話

 この展覧会の前々年(2007年)に、母校である京都精華大学マンガ学科の当時教授であった篠原ユキオ先生と牧野圭一先生のご紹介で、今の(公社)日本漫画家協会に入会させて頂いた。その流れで、僕より大分歳下の似顔絵作家の方たちとのグループ展にお声がけ頂いた。同じ日程、同じ画廊の隣の部屋で、日本漫画家協会関西支部のグループ展も併催競れるとのことでダブルで参加した訳だが、同じ搬入日なのでかなりギリギリでの制作だった。コチラの展覧会の作品は余裕を持って仕上げることが出来たが、もう片方の関西支部展は搬入の朝までかかってようやく仕上げることが出来た。(搬入に遅れてしまい参加者の皆さんにはかなり迷惑をかけてしまった…。今更ながら申し訳ないです)

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