◆令和7年、鎌倉・荏柄天神社絵筆塚祭まんが絵行灯のための作品を奉納しました!

◇絵柄展示車と絵筆塚祭について

 今年も鎌倉にある荏柄天神社で開催される絵筆塚祭で、参道に掲揚されるまんが絵行灯のための作品を奉納させて頂いた。荏柄天神社は菅原道真公をご祭神とし、天神社のHPに記載されている略年表には下記の様に記されている。 〜 長治元年(1104年)晴天の空が突如暗くなり、雷雨とともに黒い束帯姿の天神画像が天降り、神験をおそれた里人等が社殿を建ててその画像を納め祀った縁起に始まります。関東を中心に各地に分社をもち、福岡の太宰府天満宮、京都の北野天満宮と共に三古天神社と称される古来の名社です。

 この神社は漫画家と縁があり、昭和より活躍する「漫画集団」ゆかりの筆塚が2つある。一つは「かっぱ筆塚」|建立:清水崑氏 題字:川端康成氏、もう一つが「絵筆塚」|建立:横山隆一氏ら漫画集団 だ。これら両筆塚の前に祭壇を設け、道真公の御前に古筆の焚き上げ供養が行われ、その祭の際に参道に掲揚されるのが(公社)日本漫画家協会が協賛している「まんが絵行燈」だ。

 このまんが絵行燈への作品奉納は2014年(平成26年)に漫画家の辻下浩二先生の紹介で、絵筆塚祭実行委員会・会長をされていた故・小山賢太郎先生へお話しを繋いで頂いたのが始まりだった。

◇今年もまた犬の散歩時に思いつく

 毎年8月頃になると本格的にアイデアを考え出す。毎日の犬の散歩時が格好の時間である。「なんか、おもろいことないかいなぁ〜」と思いながら歩いていると、眼に入ってくるものから思いつくことが多いのだ。ここ数年は夏の旅行で車窓から観える景色から着想を得ることが多かった。普段見慣れていない景色はそれだけで印象に残りやすい。河童なので水は外せない。特に長野県の河川は水や石の色が独特で好きだ。今年は下呂温泉に行ったので、そこから思いつくかな?と思ったが、案外近くの川の表情から思いついてしまった。

◇川の砂州と川面、月光の競演

 上の写真は、今回の発想のきっかけとなった景色である。散歩の道すがらにいつも目にする景色であるが、右の写真の砂州が今回気になった。近所の川は砂が多く、川上には砂防ダムがあるので、大雨の後なんかは写真の様に川底に砂が溜まる。その砂の間を縫って水が流れ、独特の砂州が出来る。その砂州と水面に照らされた明かりで出来る表情がとても印象的だったのだ。「こんな護岸工事された現代の川に河童が住んでたらおもろいかな?」というひらめきから下記の様になった。

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水面の波の表情がキレイ
     ↓
・波の表情が寺社の砂紋にも見えるなぁ
     ↓
・砂州に砂紋が入っていたら?!

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そんな流れでアイデアが固まった。川底の写真を撮ったその場で振り返ると見える、山間から覗く仄暗い月明かり。何かこれも趣深いな、と思って書き留めた。以下がその時のアイデア帳のページ。

散歩の途中で立ったまま描き留めているので、雑なところはご愛嬌。右のページは帰宅後に描き込んで暗さを際立たせている。(※クリックすると拡大します)

◇小下絵から完成へ

 アイデアが決まれば小下絵(ラフスケッチ)を描く訳だが、最近はiPadとApple純正アプリのフリーボードがとても重宝している。撮影してきた写真やウェブで調べたモノなども、下絵と共に同じ書類内で一覧できるので便利なのだ。またApple Pencilで描くペンの種類も豊富なのが良い。
上の写真でいえば、右端の篆書体なども辞書の当該ページを撮影して貼り付けておくととても便利だ。(昔は辞書に付箋を貼っていたり、撮影した写真を印刷してノートに貼り付けたりしていた訳で…)
 ここまで来ると紙に一度鉛筆で下絵のイメージを描いて確認する。鉛筆や筆という本物の画材と紙に対して、デジタル上の絵は微妙にしっくりこないのだ。やはり最終的にはアナログなんだと思う。是非完成品と見比べてみて下さい。

◇実は…のこぼれ話

 実は2019年(令和元年)1月に3泊4日で鎌倉・江ノ島に旅行に行った際、是非お参りに行こうと思ったが、初日の江ノ島で風邪をひき、そのまま宿で二日二晩寝込んでしまったため、結局行けず仕舞いだった。このときは「未だお参りするに能わず」との道真公のお考えだったのかも知れない。いずれ機会を見つけてお参りしたいと思っている。

たなべたい記

◆令和5年、明けましておめでとうございます!

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

有り難い事に昨年から、クリスマスカードで使用する一コマ漫画をご依頼頂いている。その歳の干支とサンタを絡めた漫画である。その関係で年賀状を描く前に干支についてアイデアを出す訳である。しかし、最近の私の年賀漫画は和風なので、サンタで思いついたアイデアを年賀状に流用出来るかというと、なかなかそうはいかない。しかし、今年はその時思いついたアイデアの発展で今回の様な形となった。

最近はアイデアを考える際に、ネットや辞書で、干支に関する諺を調べる訳だが、「蛇の道は蛇」とか「蛇の目傘」とか「藪蛇」がある中で、何故か「蛇足」が気になった。上の写真で四角く囲ってあるのは、何かが出て来そうな(産まれそうな)感じがしたからだ。

写真はこの漫画のアイデアスケッチ。気になったコトは辞書で調べてみたりすると、そこをきっかけにアイデアが膨らむときもある。今回は気になったので改めて意味を調べてみた。メモの中にも「何か出て来そうな予感」と矢印をした。後日この頁を見て、「本当なら存在しない蛇の足」→「サンタの靴下」→「蛇の子がプレゼントをもらうために蛇皮の靴下を下げる」=『蛇足』という流れでこのアイデアに至った次第である。右頁ではおおよそのラフスケッチと、靴下の数をどうするのか?を考えている。しかし、やはり靴下は一つの方がシンプルかなと思って、清書では一つとした。

今回、靴下と蛇は割に早く決まったのだが、ツリーの描写に手間取って色紙を7〜8枚描き直した。毎回一発描きなので、どうしても描き損じが出てしまう。靴下が吊り下がっている感じが上手く表現出来たな、と我ながら思う。いつも不思議なのだが、完成してから眺め直すと、絵の中の様々な要素が収まるべき所に収まってくれて、画面構成(構図)に張りがが出ていると思う。描いている時にはある程度考えてはいるが、完成後に見直してみて、思いのほか上手くいっているなあ、と感じるのだ。絵と文字の要素が奏でるリズム感、これもまた楽しい。

若い頃はアイデアがなかなか出てこずに産みの苦しみばかりだったが、最近は尿漏れ(失礼)よろしくアイデアが出てくる穴がゆるくなったのか、ポコポコアイデアが出て来て楽しい。若い頃、大学の授業で牧野圭一先生のアシスタントをしていたときに、学生の前で海外公募展用のご自身の作品を描いて見せておられた。端で観ていると、ポコポコアイデアが出てくるので驚いた記憶がある。そんな牧野先生の足元にも及ぶべくもないが、歳をとるとアイデアってポコポコ出てくるんだなぁ〜と、沁み沁み思う。ちょっとは成長したのかな…?

たなべたい拝

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